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7/24 JAXA相模原キャンパス特別公開2015(特別講演会編)

「田村先生、山岸先生、高井先生に…所長も!?行かなきゃ」
JAXA相模原キャンパス特別公開のイベント内容が発表された時、一番興味を持ったのが、このアストロバイオロジーの講演会。

講演会は2部構成となっていて、第1部は「最新トピックス講演会」として、エンセラダスの熱水について渋谷先生、たんぽぽ計画について矢野先生が講演。

第2部では、冒頭の4人によるパネルディスカッション。
いずれもその著書を読んだり、名前を聞いたことのある先生方。
それで休暇を取り、台風の行方にやきもきし、前日入りして朝から並び、聴講したというわけです。

その内容は結果から言うと、ある意味で期待を裏切るものでした。
そんな中で、重要な発言もありました。
JAXA宇宙科学研究所・常田所長は宇宙研の学際科学研究系を、
「アストロバイオロジーをやるセンターとしていこう」
と言ったのがそれです。

 

ええっと、唐突ですね。
遅くなりましたが、今年もJAXA相模原キャンパス特別公開に行ってきました。
その一環として開催された講演会の内容と、上の発言の経緯等を書いていきます。

(以下、かなりの長文です)

講演会は、司会を務める矢野先生の挨拶で始まりました。
「まだ金曜であるにも関わらず、よくお越しくださいました」
この言葉にいきなり脱力。
…いや、このために、それなりに無理をしてるんだけど…

気を取り直して、第1部の「最新トピックス講演会」から書いていきます。

※参考までに、一昨年と昨年のリンクを貼っておきます。
一昨年のトークイベント(エンセラダス探査、たんぽぽ計画)はこちら
昨年のアストロバイオロジーブース(たんぽぽ計画)はこちらです。

 

第1部 
「土星衛星エンケラドスの海底に熱水活動を発見」 渋谷岳造

※タイトルはエンケラドスとなっていますが、この講演会中はずっと「エンセラダス」で通っていたため、今回も「エンセラダス」で書いていきます。

ええっと、内容はタイトル通りの話です今年3月に発表されたばかりの最新の話です。
話は、エンセラダスとハビタブルゾーンの説明から始まりました。

太陽系のハビタブルゾーンに入るのは地球だけですが、その外側でも局所的に氷が溶けている所があり、今はそこの探査が行われているのだとか。

そこで登場するのが、土星の衛星・エンセラダス。
そのエンセラダスについて簡単に紹介。

  • 直径500kmの小さい、白い氷に覆われた衛星。
  • 探査機「カッシーニ」の写真によると、北半球は隕石衝突でできたクレーターが多いが、南半球にはほとんどない。
  • 南半球には割れ目による「タイガーストライプ」という縞模様がある。周囲は-200℃くらいだが、ここだけ-50℃くらい。また、有機物を含んでいる。
  • 南極付近から宇宙空間に氷や水をピューっと噴き出している。この氷が土星の輪、Eリングを構成している。

そこでNASAは前述の探査機カッシーニを、水や氷を噴き出している所(プリューム)に突っ込ませて観測。
プリュームの成分は、ガスとしては水蒸気、CO2、アンモニアや有機物など。固体としては氷や塩(NaCl)。
アルカリ性の内部海(その量は日本海と同じくらい)があることもわかったそうです。

で、そこに生命は存在するのか?

これまでの観測で生命に必要なもののうち、水、そして生命必須元素(炭素や窒素)があることがわかっていて、残るはエネルギー。

ここからが本題になるのですが、それは偶然に発見されたそうです。
半径およそ5〜10nmの純粋なシリカ(SiO2、とくに「ナノシリカ」というそうです)
こういうと難しく聞こえますが、温泉が冷えたときに白濁するものがそれだそうです。
それなら、馴染み深い気がする…

渋谷先生らはJAMSTECにある、地球の海底の熱水噴出孔を再現する実験装置で、このエンセラダスの海の再現実験を行ったそうです。
具体的にいうと、合金製の圧力釜で、エンセラダスの岩石コア(カンラン石や輝石)と海水(アンモニアやCO2を含む)を、400気圧という高圧で数ヶ月間「煮込んだ」そうです。

その結果、少なくとも90℃くらいの熱水活動がないと、ナノシリカはできないということがわかったのだとか。

※詳しくは、専門に書かれた解説記事がたくさんありますので、そちらをご覧ください。
「エンセラダス 東大」などで検索していただければ出てきます。

 

ということで(?)、現在もエンセラダスの内部海から熱水が噴出していることがわかり、水、生命必須元素、エネルギーの3つが揃いました。

あとはいよいよ、生命そのものの探査。
この探査は早くやってほしいなあ…
自分も、もう若くないし。

 

(補足)この講演会の後、渋谷先生のお話を直接聞く機会に恵まれました。
そこで、前から疑問に思っていたことをぶつけてみました。
「エンセラダスの海と地球の太古の海と、似ている所はあるのですか?」
答えは予想以上のもので、エンセラダスの海と、酸素が無くて還元的だった、太古の地球の海とはそっくりなのだとか。
「エンセラダスの海は、地球の超最初期の海洋環境を保存している状況です」
これには絶句。
また一つ、エンセラダス探査を推す理由が増えてしまいました。

というわけで、特別公開アストロバイオロジーブースで行われた投票でも「土星の衛星」に投票。

Photo

まあ、その、トップは火星に譲ったようです…

 

「宇宙実験『たんぽぽ』の開始:宇宙塵捕集と微生物暴露」 矢野 創

たんぽぽ計画については去年も書いているので、簡単に。
今年の4月にドラゴンで国際宇宙ステーション(ISS)に実験装置が運ばれ、いよいよ実験が始まったそうです。
前後のロケットが失敗する中でのスタート。
きっと、運に恵まれている…はず。

このたんぽぽ計画は3年間を予定していて、
捕集パネルは毎年総取っ替え。
曝露パネルは1年目に1枚、2年目に1枚…と1枚ずつ回収するのだとか。

特別公開アストロバイオロジーブースにあった写真を貼っておきます。

Photo_2

捕集パネル(左)と曝露パネル(右)。

Photo

曝露する生物の一例。

 

ISSで実験装置を準備する動画の上映もあり、渋谷先生の話とは違った意味で、あっという間までした。

 

第2部 パネルディスカッション「日本のアストロバイオロジー研究における宇宙科学の役割
常田佐久(JAXA宇宙科学研究所所長)、高井研(海洋研究開発機構)、田村元秀(東京大学大学院教授)、山岸明彦(東京薬科大学教授、日本アストロバイオロジーネットワーク代表)

さて、楽しみにしていたパネルディスカッション。
2年前の再戦(山岸先生v.s.高井先生)はあるのかな?
などと邪な期待をしていたのですが、さにあらず。
ちょっと「お堅い」話になりました。

まず、司会の矢野先生が「アストロバイオロジー」がどういう学問か説明し、こうまとめました。
「宇宙研はどこに属するのか、考えたい」
…ん?

先生方の自己紹介(各々の所属機関の紹介も含む)が終わると、矢野先生が宇宙研への要望、提言を求めました。
話を聞いているうちに、自分が勘違いをしていたことに気づきました。
これからの「宇宙科学」を話す場ではなく(まして「再戦」の場ではない)、これからの「宇宙科学研究所」を話す場だったのだと。

具体的な話は、以下のとおりです。

 

・田村先生:
宇宙研でアストロバイオロジーをもっと広めてもらいたい(なにせ、宇宙研でアストロバイオロジーをやっているのは135人中、矢野先生1人のみとのこと)。
そして、天文学者としての立場から、今計画中の30m望遠鏡(TMT)の後継は、宇宙でやりたいとの要望でした。
「もっともだ」と思いつつも、「(赤外線天文衛星)SPICAは違うの?」とも思ったり。

 

・山岸先生:
山岸先生は、パネルディスカッションなのにスライドを使うという気合の入れよう。
国内外のアストロバイオロジーの状況を紹介しつつ、
「宇宙研もこれに相当する機関を」作ってください、
「宇宙研、遅れないでください」
と挑発。

もちろん、日本が今まで「アストロバイオロジー」をやっていなかったというわけではありません。
これまでは各々が意識せずにやっていて、それを「我々が勝手に(アストロバイオロジーと)認定いたしました」
と話は脱線。

たしか、下の写真のような内容だったと思う。

Photo

特別公開会場のアストロバイオロジーブースにて撮影

  

「はやぶさ2」は当然として、「ちきゅう」や「しんかい6500」まで入ってる!
どれだけ幅広いんだ…

 

続いて、日本のアストロバイオロジーの戦略。
これは、下の写真のようなものだったと思う(こればっかり)。

Photo_2

特別公開会場のアストロバイオロジーブースにて撮影

「国際であろうが日本であろうが、チャンスがあればそれを逃さない」
…お、おう。

 

ええっと、「要望」の話でしたね。
「今回はこれをやりましょうではなくて、長期的には火星とか氷衛星(の探査)に日本も参画するということを目指して、そのためにはまずどういうことをしなくてはいけないのか?」
そんな難問を投げかけて、山岸先生の話は終わりました。

これを書いていて気がついたんだけど、山岸先生の要望は大局に立った話で、正論だったと思う。
当日は正直、
…話が長いよ。
なんて思ったりしたんだけど。

 

・高井先生:
山岸先生の話を受けて「それはそのとおり」とした上で、独特の口調で、宇宙研の中に切れ込みました。

曰く、JAMSTECは実際の予算よりも「活発に」見せてる。
曰く、昔は「船宿」と呼ばれていた時代があったが、ビジョンを持って船を動かしていきましょうという風に変わった。
曰く、JAXAはまだ「宇宙宿」で、明確なビジョンで、宇宙探査を引っ張っていく気概が足りない。
云々

 

正直、「そこまで言っちゃっていいの?」 とヒヤヒヤしましたが、話は続きます。
探査に「道筋をつける」ことが重要という、高井先生。

そのためには技術開発だけでなく、元となるビジョンを育てるサイエンスを育てないといけない。
では、どうやるのか?
先生の考えはこうです。
1人100万とか200万渡せば、いろいろな人が集まってくる。
その中に時々、すごい人が来て、次の10年、20年先の探査を支えるようなものが見えて来る。
これを引っかけるのだとか。
そうして新しいビジョンを作っていく… 

 

2年前、マイクを奪い合った山岸先生と高井先生が、この日は見事な連携をしたように見えました。
その、山岸先生が「外堀」を埋め、高井先生が宇宙研「内部」に切れ込むというような。
打ち合わせでもしていたのかな?

 

これらの「攻撃」に対し、所長が答えます。
「高井先生の迫力に圧倒され」て、まず、高井先生への答えから始まりました。

常田所長:
まず、「はやぶさ」や「はやぶさ2」で、世界にないものをやってきたことをアピール。
その上で「『計画性はあるんですか?』と聞かれているのだと思う」と総括。
現在、ミッションを公募方式で選定していることを説明し、
「次に、何が来るかわからない」
と問題点を指摘。

 

そして、所長は2つの「改革案」を示しました。

  • 宇宙研にある5つの研究系、そのうちの学際科学研究系を、
    「アストロバイオロジーをやるセンターにしていこうという計画を、これから出そうとしています」
  • ボトムアップでミッションを選考するだけではなく、計画性を持った案を作っていくとのこと。そのためには、
    「宇宙研だけではなくて、JAXA全体の努力が必要です」

田村先生の要望については、赤外線衛星SPICAが検討されていることを説明して、所長の話は終わりました。
「不十分なところがあったら、反撃してください」と言い添えて。

 

時間の関係もあり、いくつか質問を受け付けると、もう「最後の一言」。
高井先生の番になると、今度は所長を持ち上げ始めました。
「所長の、非常に前向きなご発言をいただいて、感謝しております」

山岸先生は、
「NASAはNASAのスケールでやってるんで、日本もJAXAのスケールで」
とやんわりとフォロー。

田村先生は、
「皆さんの力が重要だと思っています。」
と協力を呼びかけ、うまくまとまった感じで講演会は終わりました。

 

しつこいようですが、2年前の山岸先生と高井先生の再戦を期待していたこともあって、期待が外れたという気持ちもしないではありません。
ただ、この日の話(パネルディスカッション)は喉に刺さった小骨のように、心にひっかかり続けました。
そうして数日後、もやもやしていた部分が少しまとまってきたので、それを少し書いてみます。

 

所長はある部分は受けとめ、ある部分は流し、巧みなやりとりで言質を取らせなかったように見えます(「これから出そうとしています」だし)。

逆に高井先生は、言質を取って既成事実化しようと(例えば「アストロバイオロジーのセンター化」とか)、わざと大きく反応したように思える…

 

では、所長が言ったことは全て、リップサービスだったのでしょうか?

否、そうは思えません。
わざわざ、こんな場にやってきて発言すること自体、「熱い想い」の賜物としか思えません。
そこから考えると、言質を取らせない=所長としての立場を踏まえた上で、進むべき道を示したように思えてきました。
そもそも、地球外生命が発見されたら、これほど「学際」的な取り組みが必要になる分野もないだろうし。

 

そういうことならば。

私も高井先生にならって、大げさに反応しておこうと思います。

所長は言いました。
学際科学研究系を、
「アストロバイオロジーをやるセンターとしていこう」
と。

 

ええっと、今回はちょっと「恣意的」で「硬い」話になってしまいました。
こんな話に需要があるかどうかわかりませんが、ちょっとだけ協力できた…かな?

会場を回った話は、いつものようにユルい話になる予定です。
ただ、時期は未定…

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